章オススメのお店のカルボナーラは今まで食べたそれの何倍も美味しくて、私はこのレストランの虜になってしまった。
「本当、幸せそうに食うよな美加って。」
「だって美味しいんだもん。仕方ないでしょ?」
そう微笑む章に得意げに笑って答えた。
「そうだな。美加は素直に感情が顔に出ちゃうし。」
「え、そうかな?」
「俺が、気付かないと思った?」
そう無理矢理作った笑顔を見せた。それは見てるこっちまで切なくなる、そんな笑顔だった。
「美加…、お前もしかして…」
「―忘れさせて。」
私はまた嫌な女になろうとした。
「彼を忘れたいの、忘れなきゃいけないの。」
「美加…」
章に同窓会で告げてくれた想い。その想いを利用しようとするなんて、まるで悪魔だ。
「―美加がそれでいいなら。でも傷付くのは美加だよ?」
「章…」
忘れさせてやる!って言わないの?
「美加は俺と付き合うことになったら、後悔する。俺を利用する罪悪感、彼への想い。…それに板挟みになるんだよ、美加。」
小さく微笑んで頭を撫でる。まるでおもちゃを買って貰えなかった子供を慰めるように優しく。
やっぱり、章は優しすぎる。