「今度さ、ランチ行かない?」
「え?」
「最近安くてうまいイタリアン、仕事場の先輩に教えてもらったんだ。」
「女の?」
「まさか。…美加、ヤキモチ?」
そう笑い、私の質問に答えた。
「違うよ。ほら、高校のとき、章毎日のように女の先輩に囲まれてたから、社会人になってもそうかなーて。」
「はは。美加だって同じじゃん。」
「章の方が多かったよ。」
お互いそうしばらく言い合って、くすりと同じタイミングで笑う。
「あ、美加先生!」
角から田中さんが歩いてきて、私の名前を呼ぶ。
「田中さん、おはよう。」
「おはよう!美加先生、この人誰?」
田中さんは章を指差し、問う。
「高校のときのクラスメート」
そう答が不服なのか章の眉間にはシワが寄せてあった。
「俺、美加先生の元カレ!」
「章!」
いらんこと言うな!
うちのクラス一の地獄耳及び口の軽い田中さんに!
「先生の元カレイケメン!」
「ありがとう。君も可愛いよ。」
「はいはい、犯罪だから早く帰りなさい。」
私は章の背中に回り込み、その次のT字路まで押す。
「時間ないから急いで準備するように!」
「美加先生、カッコイイ!先生みたい!」
…先生です。
気が付けばもう夏目前。
蝉の大合唱。燦燦と身体を焼き付ける太陽、真っ青の空に浮かぶ真っ白な雲。
向日葵も、咲き誇っていた。太陽にどうかわたしに気付いて?と言ってるよう。
この夏、私はなにか嫌な予感がしたんだ。