「美加…?」

じわり、じわりと涙が視界を覆う。自分のあまりにも最低な一面に。

お酒が入ってたといっても、今の好きな人じゃない章と寝た自分に腹が立つ。
こんなに私って軽い女だった?嫌な女だった?

「…ごめんな、美加。」

章は私に謝って、零れた涙を親指で掬ってくれた。

「俺、昨日帰ったらよかったな。」

嫌な思いさせてごめん、そう言った章は見るにたえない姿で私はただ首を振る。


「…章。」

章はいつも私の気持ちを優先してくれた。いつだって自分は後回しで、私のことを考えてくれていた。

そんな優しい章が好きだった、大好きだった。


「私が悪いの、章は悪くない。」

さっきまでの憤りはもう遠く彼方へ行ってしまい、ここにはただ章への慈しみだけが心を支配していた。

「美加…」

私の震える身体を優しく包む、章の体温。そのぬくもりに涙が流れた。

ふと頭に過ぎる、坂上くんの顔に、ぎゅっと心臓を掴まれた。


いっそのこと、また章を好きになればいい−…
そう思い、私は静かに章の背中に手を回した。