「相沢渉(アイザワ ワタル)!部活は帰宅!よろしく、美加ちゃん!」

そうピースサインをする相沢くん。

「よろしくね、相沢くん。」

美加ちゃん、そう言われて少し苦笑い。私、今日から先生なんだけど…。

次々と自己紹介をするクラスのみんな。みんな元気で明るくて、きっとこれから楽しい日々を送るんだろうな。

そう思うと自然に笑みが零れた。

「坂上!起きろ!」

バシッと頭を叩かれたのはさっきの居眠り少年。

「…ってぇ…。」

怠そうに顔を上げる居眠り少年。瞼を擦り、欠伸する。

「おはよう。」

そう嫌味っぽく挨拶する私を数秒見つめ、ぽつりと言った。

「…誰?」

「今日からこのクラスの担任になった柳よ。よろしく。」

「ふーん。」

「君は?」

「坂上雅志。」

「坂上くん。これからは居眠りしないでね?」

そう言うと、坂上くんは何も言わずにまた眠りについた。

「…人の話聞いてよ。」

そうため息を吐いた。
これが私の運命を揺るがす出会いなんて知る由もなかったから…。