はぁ、と深いため息をすると「どうしたんですか」と吉田先生に言われた。

「あ…いえ。」

「柳先生は笑ってたほうがいいですよ。」

「…あ、ありがとうございます。なんでもないんで。」

「そうですか。僕でよかったら相談乗りますから。」


吉田先生は微笑んで自分の席に着く。


まばたきをする度、坂上くんの残像が浮かんで胸がちくんと痛む。

馬鹿みたい。
本当に、どうしてこんなに彼でいっぱいなんだろう。相手は生徒なのに、教え子なのに。

坂上くんは可愛い生徒の一人。田中さんや相沢くんとかと同じ、初めて受け持ったクラスの生徒。
そんな感情なんて抱いちゃいけないのに、どうしてこんなに意識してしまうんだろう。


考えても考えても、答えは出なくて謎は深まるばかり。

…うん、彼は居眠りばかりしてるからそんな坂上くんが気になるだけ。
そうだよ、それが答え。

でもこの胸の苦しみは一体なに?