パチン、と携帯を閉じて空を見上げた。綺麗な三日月がこっちを見てる。

「―幸せになってね。」

遠く離れたふたりにそうエールを送る。

「せんせ。」

その声に振り返ると、坂上くんがいた。

「消灯時間、過ぎてるよ。」

「今日、誕生日だろ?ケーキ、コンビニだけど買ってきた。」

抜け出してね、って笑うそんな表情に胸がきゅんとする。

「どうして、知ってるの?」

「村川が言ってたんだ、修学旅行の2日目は柳の誕生日なんだぞって。」

「村川先生、」

先生も私の誕生日覚えててくれたんだね。祝日でもなんでもない私の誕生日。

「さ、どーぞ。」

コンビニの袋からケーキを取り出し、私に差し出す。

苺のショートケーキが2つ。

「俺食わないから両方食べろよ?」

「こんな時間にそんな食べたら太るよ。」

「先生は少し肉付いた方がいい!」