部屋に着いて冷蔵庫から、ビールを取り出し、喉を潤す。

ぐるぐると、加納さんの言葉が駆け巡る。そんな言葉を掻き消すように呑む。
酔いが一向にやってこないそんなとき、私の携帯が鳴った。

「…もしもし?」

誰からの電話か確認しないで出たら、明るい声が鼓膜に届いた。

『ハッピーバースデー!』

「…え?章?」

『23歳の抱負をどうぞ!』

久しぶりに聞いたその優しい声に視界が滲んだ。
聞きたかった、その声。
悲しいときいつも慰めてくれた声。大好きだったその声。

『もしもーし?23歳の柳美加さん、聞こえてますかー?』

「、聞こえてる。覚えててくれたんだね、私の誕生日。」

『そりゃまあ、俺っていい奴だし?』

章はいい人だってわかってる。自分のことは後回しでいつも相手の気持ちを優先する。そんなとこ大好きだったけど、心配だった。