加納さんは黙りこくったままの私に痺れを切らしたのか最低、と言い残しその場を去ってしまった。その捨て台詞は、私の心をまたえぐった。

「…ほんと、私って最低ね。」

そう呟いた言葉は風に掻き消された。まだ乾ききってない髪が頬に当たる。
少し冷えたその先から、一滴の水を地面に落とす。それが涙のように映った。私の瞳からは流れない涙を、髪が流したようだった。

しばらくそのまま立ち尽くしてどのくらい経っただろう。私は部屋に向かった。