坂上くんがいそうな場所を渡り歩く。教室、中庭、屋上…どこにも彼はいなかった。ふとある場所が頭を過ぎった。

私は確証はなかったけれど一応、歩き始めた。


「坂上くん!」

案の定、坂上くんはそこにいた。初めて、坂上くんに缶コーヒーを奢った自販機の置かれた場所。

「みんな体育祭の練習頑張ってるのにこんな所でなにしてるの?」

「…別に?練習なんかしてもどうせ無意味だし、ならいっそやらないで遊んでたらいい。違う?」

私の目を見ずに、淡々と坂上くんは言葉を紡ぐ。

「無意味?そんなわけないでしょ?みんな一生懸命頑張ってるのにそんな言い方、よくないよ。」

「―そうかな?案外みんなも頑張ってないかも。」

今までの坂上くんじゃなかった。まるで坂上くんが別人になったようで、私は俯いてしまった。