暫く沈黙が続く。階段を下りる足音だけが、響く。
その沈黙を破ったのが、坂上くんの質問だった。

「―あいつ、どこ行ったの?やっぱりロンドン?」

「ううん…1年の英語の先生はワシントンって言ってたよ?」

「すげ、ワシントンか…すげ、首都じゃん。」

「ロンドンも首都だよ?」

2回もすげって言わなくても…。

「あいつ、平気かな。」

「大丈夫よ、英語はネイティブ・タンみたいにすらすら話せるみたいだし。」

「…なにそれ。」

「母国語のことよ?直訳は生まれながらの舌。」

そう舌をべーっと出す。

「タン=舌はわかるでしょ?」

その問いに頭を捻る坂上くん。…一応この高校、進学校なのに…
溜め息をなんとか飲み込んだ。