歓迎会を終え、私は途中まで同じ方向だと言う、吉田先生と一緒に帰路に着いた。

そして吉田先生と別れ、一人で街を歩いていた。
行き交う車のライトが私に見せたのは、公園の低いぶらんこに乗る人影。

ちらりとその方を見ると、見覚えのある顔だった。


「…さ、かうえくん?」

あの居眠り少年だった。

その小さなか細い声が聞こえたのか、少し下を向いていた視線を私のいる方向に移した。

「あ、こんばんは!」

ニッコリ笑って、手を振る。
そんな私を少し見て、ぶらんこから降りた。

「ちょっと、坂上くん!」


去ろうとする坂上くんの腕を掴み、制止する。

「…なに?」

「今の時間、18歳未満がうろついていい時間じゃないよ?」

そう言い、腕時計を見せた。

「うっせえな。いいだろ別に。」

「よくないよ。補導されちゃうよ?」

「いいよそんなこと。」

私と目を合わせようともしない坂上くんに、私は無理矢理でも合わせようと彼の顔を両手で挟み、私に向ける。

「な、なんだよ…」

「人と話すときは相手の目を見て話す。小さいとき教わったでしょ?」

「…誘ってんの?」

「はい?」

「顔赤くして涙目で。こんな大胆な行動。…誘ってるだろ?」

ニヤリと笑う生徒。
その顔は教え子だって思えないほど妙に大人びてて、不覚にも少しドキドキしてしまった。

「これはっ、お酒飲んでたからで誘うとか…そんなんじゃないわよ!」

パッと手を離し、そっぽを向きそう言い放つ。