「そんなに萎縮しないで、こちらにどうぞ」


にこやかに母が言った。


『そうじゃ、はよせんか』


おまえ、学校からいなくなったと思ったら、そんなところで待ってたのか。

この暇ジジィが。



ジジィを睨みつけながら、言われるままに両親と向き合うような形で座った。



その直後、ガブリエルが床に両手をつき、頭をこするほどに床につけて「すみません」と言った。


「ボクはこの子の遠い親せきで、今日ここに挨拶のために来たのですが。ボクが趣味で飼っていた『毒トカゲ』が逃げ出してしまい、それを二人が必死で探してくれたのです」


おいおいおいおいおいおいおいおいっ!!

その突拍子もない説明はなんだ、こらっ!!


「見た目には普通のトカゲと変わらないのですが、毒を持っていて。で、捕まえるときに毒に真理矢くんがやられて。ボクは医者なので、その場ですぐに治療をさせてもらいました。命に別状はほんとにありませんが、ただ、激しく眠り続ける副作用のせいで、あのように……」


トカゲね。
確かに、アスタロスって爬虫類も飼ってたな。
毒も吐いたし。
毒にやられたし。

捕まえるというのもあながち間違った表現じゃない。

半分は本当だ。


ただ、人智を超えた存在にやられただけの話。