「奈々さんは、何であいつ…星斗が好きなんですか?」


至って真剣な顔をしてるから少し驚いた。
確かに隼人は理由は分からないけど、星斗の事を嫌ってる。
だから、自分からあまり星斗の事を話そうとしなかった。

あたしが知りたそうにしてるとか、不安そうな時以外。

「何でかぁ…何だろね?」

にっこり笑う。

「ちょっと!真剣に答えてください!」

隼人は怒ってるけど、分かんない。
どこがいいかって言われたらたくさんある。
うーん、何で好きかかぁ…

「何でって言われると困るけど、星斗の一番いいところは優しいとこだよ」

取り敢えず、自分に分かることだけ答えてみた。
隼人は納得いかないって言うような顔をしてる。

「あいつが優しい…それ、奈々さんにだけですよ、きっと」

そんな事…多分ない。
前に見たお客さんの前で話す星斗はとっても優しげで丁寧だった。
でも、反論できるほどあたしは普段の星斗を見てない。

「前に…星斗は俺の欲しいものをたくさん持ってるのに笑わない、って言ってたよね?」


花火大会の日の事をあげると少しだけ隼人は俯いた。
その顔は少し気まずそうな後悔したような顔。

「…まぁ、はい」

「星斗は一番欲しいものを手に入れてないじゃないの?あたし、欲しくないもの持ってても全然嬉しくないよ。そんな感じじゃないのかなぁ…」

遠くを見るように話す。
星斗の心が知りたい。
会ってきちんと話したい。
隼人と話して星斗の事を聞くたびにその想いは増えていくばかりだった。