「まだ、なんですけど。他のテーブルと間違えてんじゃ?」


隼人の表情は店に来た時のような優しそうな笑みじゃない。
心底うざいって思ってるって顔に書いてあるような顔。
ぞくにいう呆れ顔?

店員が眉間にしわを寄せる。
…これもいい女アピールだったのかな?
呼んでなくても何かを感じ取って注文聞きます、みたいな?
それが目的だったらものも見事に外れちゃったけど。

「は?…え?、すいません。またお伺いいたします」


…あたし段々悪女になってない!?


普段、あたしに笑って接してくれる隼人が店員にも同じ笑顔を向けから何か嫌だとか…はあり得なくない気がする。
好き、とかそうじゃなくて。弟離れが出来てない姉、みたいな心境。


あ…寂しかったんだ、きっと。
何か隼人があたしを店員と同じ他人みたいに思ってるのかなって感じて。


「奈々さんは何にする?」


でも、隼人はさっきの店員に向けたような表情じゃなくて、花火大会の日よりもちょっとだけ柔らかくなった笑顔をいつものようにあたしに向けてくれてる。
それが嬉しくって多分あたしは満面の笑み。

「いちごパフェ」

と答える声の語尾には音符がついていたと思う。それかハートが。