「2人、です」

それに負けないくらいの綺麗な笑みで隼人も返している。
一瞬だけ、店員が隼人に見とれていた。
隼人の顔を見たとたん顔が緩んでたし。

「禁煙席でよろしいでしょうか?」


「はい」


好青年、という言葉がぴったしの隼人にもう店員さんはおちたらしい。
って言うか禁煙席とかって決まってない?
だってあたし達どう見ても20代過ぎてるようには見えないと思う。見えてたらかなり失礼だし。
でも、高校生と言っても隼人は通じるかも知れない。

星斗より遥かに、って言っちゃ星斗が怒ると思うけど、大分おっきい背は170あるんじゃないかって思う。
中2でその身長って言うのは成長期に改めて感動させられそう。
落ちついた雰囲気だし、大人な接し方だし。高校生って見られても仕方ない。

でも、あたしは身長も155あるかないかって位。
声は低めだから電話とか出るとお母さんだと思われるけど、顔は童顔。
後半年で高校生だって言うのにあたしの方がよっぽど幼い。

もうメロメロの店員さんに案内された席につく。
水を持ってきたのがやっぱりさっきの店員さんでちょっと眉毛がぴくっとなった。
さすがに引いちゃうでしょ、それは。
どんだけ関わり持ちたいの…と思ってさっきの事を思い出す。

さっきは気付かなかったけど、ただ単にあたし達が20代に見えてたとかじゃなくて隼人と話したかっただけなのかも知れない。
はたまた、高校生でもちゃんと大人扱いする私は気遣いの出来るいい女よ、アピールがしたかったのかもしれない。
あたしの深読みなだけかもだけど、当の本人が全く気付いてないのが面白い。

気付いて…気付いてる?

「ご注文はお決まりでしょうか」


声のする方を見ると、またさっきの店員。
それを見た隼人はあからさまに窓の方を向いて大きなため息をついた。
まだ隼人もあたしも呼び鈴押してないよね?こんなおせっかいな店員がいていいんだろうか…