星斗に会えない日々はつまらなくて楽しかった。
つまらないのは星斗に会えない事。
楽しいのは会えない分だけ星斗の事をずっと考えていられる事。

でも、会ったばっかで好きになったあたしにはそんなに考えるほど星斗の事を知らなくて毎日無理やり交換した隼人の電話番号に電話して星斗の事を聞いてた。



『もう、星斗は起きてる?』

『起きていないよ?花屋にバイトしに行った』


些細なことでも星斗の話を聞くだけで星斗を近くに感じれた。
隼人がいなかったらあたしは毎日の星斗を知ることをできないと思ってお礼を言った。

『いいんですよ、別に。俺もやきもち妬かせられるし。それに奈々さんと電話してると恋っていいなぁって思ってくるんですよ。…ってかはっきり言っちゃいます。俺好きな人できました!!』


やきもちって言葉を聞いたときは妙にうれしかったけど、その後の隼人の好きな人宣言で一気に吹っ飛んだ。
ごめんね、星斗。
でも、それだけ衝撃的だったんだもん。

『俺、今何気にボヌでバイトさせてもらってるんですけど』

それはお母さんに聞いた。
ものすごーく助かるって言ってあたしに悔しい思いをさせて手伝わせるつもりだったらしいけど、全然悔しくないし。
夏休みのお手伝いから解放されて嬉しい気分に浸ってる。
ほぼ毎日手伝いしてたのに夏休みまでとかいってふざけてるもん。


『そこに来る女の子で、何か奈々さんの知り合いっぽいですよ?毎日毎日来ては奈々さんがいるか聞くんです。その子がもう可愛くて――…』

隼人は何たって星斗の弟だし、出来る事なら何でもしてあげたい。
けど、さすがに沙耶と翔太を引き離すのはごめんです。
だってあたしが手伝ってることを知ってるのは沙耶以外にいない。

『ごめん。隼人。その子彼氏いる』

単刀直入に言った方があと後傷つかないと思ったけど、その後の隼人の落ち込みようは激しかった。
でも、これが隼人のためだと思ってる。
隼人は星斗の弟だもん。
きっと隼人の事を一途に想ってくれる女の子が現れるはず!と励ましたら少しだけ回復してた。


今まで特定の彼女がいなかった隼人にしては大分進歩したと思うしね。