隼人は高校生…
うちの学校は中高一貫校だけど、何であたしの事知ってるの?

「それがなんであたしを知ってるの?高校だし、星斗は」

高校なら尚更知る機会は少ない。
合同なのは…文化祭…くらい。

「文化祭ですよ」

出来れば聞きたくなかった。
きっと、あの事でしょ…?

「あの意見文発表会…」

「あーやめて、やめて。聞きたくない」

うちの学年からはこれこそ優等生という人が発表と言う事になってた。
その人のテーマは「戦争」だった。
聞こえはいいけど、最悪最低なものだった。
何でそんな作文を先生は推薦したかと言うと答えは簡単、理事長の息子だから。

今時そんな理屈が通るのかと言ったら通るんだよ、これが。
うちの学校は結構な人が入る私立の進学校。
これで中高一貫だから人気が高い。
その分、寄付と言うのは大事なキーワードになってくる訳。
しかも市立ではなく私立ときたら好き勝手し放題。
勉強だけ教えればいいって先生ばっかでひどい学校。
そういう表現が一番合ってる気がしないでもない。

要するにたくさん寄付してて態度もまじめな優等生くんは先生方のお気に入り。
推薦したのもそこから。

まじめな優等生くんでも性格はすごく悪い。
だから同じ学年の人にも嫌われてるんだけど。

『…僕が思ったのは、何故戦争をやってる国から逃げようとしないのか、という事です。嫌なら逃げればいいのに、それをしない人達は‘馬鹿’だと思います』


今でも覚えてる、あの嫌みで耳障りな声。
まるで戦争をしている政府ではなくて逃げない人たちが悪いというようなそんな言い分。
鳥肌が立った。
自分が正義を考えてるとは思わないし、いい人ぶってるとも思わない。

でも、戦争は悪いのは政府でしょ。
いくら領地を広げるためとか言っても所詮人殺し。
それをいいって言ってたら世の中めちゃくちゃな事になるに決まってる。

あたしはこの優等生くんの作文を聞いた時、鳥肌が立ってそれから溜息をついた。
きっとこいつは甘やかされて生きてきたんだろうと分かる作文だったと思う。
何の苦労もしないで上から見てるだけの存在。


それが無性に気に障った。
気付いた時にはあたしの口は止まらなかった。