それが間違いだった。
あたしが星斗の事を考えてれば星斗が自転車に乗ってるあたしと隼人を見た時の気持ちが分かったかも知れないのに。

見られるかも知れない、と手を外すことだって出来たはずなのに。


それなのにあたしは卵にいっぱいで星斗の事は考えてる余裕がなくなった。
星斗がこんなにも好きなのに。

「ちょっと、もっと早く漕げないの?」

イライラ気味で隼人に話しかけた。

「あのねぇ、俺は奈々さん乗っけてんの。いくら俺だって2人分の自転車そんなに早く漕げませんー」

あたしが重いとでも言うように返してきた。
そりゃ確かにあたしは軽くはないよ?
だってこの前だって…ってそんな話はどうでもよくて。

「とりあえず急いでよ。隼人見てても急いでる気がしないもん」

「俺は感情を外に出さないタイプなんで。これでも急いでます」

いやいやーそんな風にはとても見えませんよ。
全く隼人は年下のくせに…年下だよね?
そう言えば敬語使ってたし、あたしの名前さんづけだし。

「ねぇ、隼人って何年?」

風を切って自転車を進めていく隼人に聞く。

「今さらですか?俺は奈々さんより一個下の中2ですけど」

「何であたしの名前もさぁ、学年も知ってるの?」

これは前々から思ってた疑問。
星斗も知ってたし。
ちょっと不気味なんだよね。

「一緒の学校ですよ?俺もあいつも」

あいつ、というのは星斗の事だと思う。

「星斗は何年?」

「そんな事も知らなかったんですか?」

びっくりというか呆れたように言うけど、そんな時間なかったもん。

「星斗は高2ですよ」

あたしは隼人の言葉に言葉をなくした。
高2。
高校生…?