でも、この際もう関係ない。
断われればあたしはさっきのようにまた独りで買い物、なだけ。

「いや、別に」

否定とも受け取れる言葉を肯定だと思う事にして隼人の腕をとる。

「じゃ、いこ」

連れ去る時に若干、引きつった笑みだったのは気のせい?
来た道を引き返すようにくるっと向いて歩きだす。
目的地はもう決まってる。


ぐいぐいと引っ張るあたしに抵抗するようにゆっくり歩く隼人。
そりゃ、いきなりだし無理やりだもんね。

「…どこ向かってんの?奈々さん」

隼人は必ずあたしに何か言うとき最後に奈々さんをつける。
無意識かは分からないけど、奈々さん、なんて普段呼ばれないから嬉しくなる。

「秘密。あっねぇ隼人って子供好き?」

「…」

何も言わない。
それは嫌いって意味なのかな…?


お構いなしに行くあたしのおかげでやっと目的地に到着した。
全く隼人が抵抗するから15分もかかちゃったじゃん。
とやつあたりに隼人を睨む。
隼人は首をかしげて苦笑い。

少し路地裏に入ったところにある知る人ぞ知る名店――って言うのはあたしが作ったんだけど、綺麗な隠れ家的カフェ。

童話に出てくるような可愛らしいデザインのカフェにあたしは入る。

「おっい、待てよ!」

隼人に大声で言われて立ち止まる。
後ろを向いて出来るだけ優しい声で話す。

「なーに?隼人。あたし隼人のせいで大分遅れたんだけど?」

声だけは優しいと思う。
ただ、顔には自信がない。
きっとマンガで言うならいらいらのマークがついてる。

「おっ俺もこの店に入るの?」

どうやら声だけ作戦は効かなかったらしい。

「当たり前。暇なんでしょ?手伝ってよ」


まさか手伝えって言われるとは思ってなかったらしい。
って言うかこいつ役に立つの!?

あたしの頭の中はそれだけだった。