意地悪く笑う星斗。
その笑顔が今堪らなく恋しい。

目を瞑れば、すぐに出てくるのに。
花火の音で目を開けるとそこに星斗はいない。

寂しい、悲しい、逢いたい…
そんな気持ちがあたしをどんどん包んでいく。

ねぇ、星斗は違う?

あたしに出来るなら逢いたくないと思ってる?
思ってないでよ。
あたしに会いたいって思っててよ。
じゃないとあたしは何を信じてあなたに恋してればいいの?

手に入らなくて悲しいものはあたしだと言ってよ。
頑張っても手に入らない君が好きって言ってよ。

それだけであたしは星斗に一生恋できるのに。


お願いだから、笑顔を見せてよ。
あたしの目の前でまたくくって笑って見せてよ。

「…本日の花火大会はこれをもちまして終わりとさせていただきます。本日は――」

アナウンスの声が辺りに響いた。
いつの間にか花火大会は終わっていた。

結局、沙耶達帰ってこなかったなぁと思いながら、隣を見た。
隣には隼人がやっぱり座っていた。
星斗を憎んでると言っていたけど、ほんとは羨ましいだけなんじゃないのかな?
自分から見たら幸せに溢れてるはずの星斗が笑ってないのが何故だか分からないんだよね。

隼人も子供だなぁと思ったら、笑みが自然と顔に出た。
‘あいつ’だなんて親しい人に使う言葉。
憎んでる人に使わないよ?隼人。

「何笑ってるですか?奈々さん」

敬語じゃなくなっていた言葉遣いもまた元に戻って表情も裏がありそうなものに戻ってしまった。
少しだけ隼人の本物を見れた気がしたのに。