出発したのが5時で着いたのが6時。
いくら電車を乗り継いだとしてもゆっくり歩きすぎた。

文句を言う翔太を無視してアイスを買ったりコンビニに言ったらしたのもあるけど。

着いた時にはもう河原は人で溢れてた。
きょろきょろと探していると端の方が空いていたからそこで見る事にした。
30分余ってるなぁと思って周りを見るとすぐそこに屋台が出ていた。

「ねぇ、2人で屋台行ってきなよ。あたし、ここで待ってるから」

「いいのか!?」

翔太は嬉しそうに食い付いたけど、沙耶はあたしに悪いって顔してる。
沙耶ってすぐ顔に出る。

「沙耶~行ってきなよ。誘ってもらったお礼だよ?受け取ってくんなきゃ嫌だ」

小声でささやくと沙耶は笑顔になった。

「いってらっしゃい」

嬉しそうな2人に手を振って溜息。
あたしも星斗と…
そう思うと悲しくなる。
考えないようにしてたけど、星斗はあたしの事忘れちゃいたいのかな?
あたしは忘れたくないけど星斗はそうだとは限らないよね。

楽しそうに話すカップルを見てまた溜息。

いいなぁ…
でも、忘れるくらいならこんな思いをした方がマシ。

きっと今誰かと付き合っても星斗の影を探しちゃう。
思い出が少ないあたしは星斗と似た行動を見つけるたびに敏感になった。


毎日、この仕草が見れるんだったら付き合いたいって思うほどに。
かろうじでそれを止めるものは星斗の名前だけ。
名前を聞いてこの人は星斗じゃないって思いだす。


「そこの君?一人?」