「思ったのですが、王子とクリスティナでは、俺様王子と純情メイドではなく、

俺様メイドと純情王子になってしまうのでは」

「いや…そんなことは…」


セバスチァンの意見に頷きそうになるのをなんとか堪える。

男として俺が俺様にならねば……。

こんこんと、いうノックと共にクリスティナが俺の部屋へ入ってきた。


「失礼致します。…王子は何をされているのですか?」


俺は走らせていたペンを止める。


「これはだな、クリスティナに囁くための俺様な愛の言葉を考えていたのだ」

「まだ、そんなことをやっていたんですか」


呆れたように、クリスティナは俺の愛の言葉集を黙読した。

終わると、真剣な眼差しで俺を見つめる。


「王子は、私のもので誰にも渡しませんから」


それは、俺が一番初めに書いた言葉で、俺がクリスティナに言いたかった言葉だったのに。

先に言われてしまった。

だというのに、不覚にも胸がきゅうと熱くなる。

俺は小さく苦笑した。




クリスティナにはきっと一生勝てない。




<了>