「クリスティナ、セバスチァンは何の用なんだ?」

クリスティナは答えず、俺の前をずんずんと歩いていく。

俺はその背を急ぎ足で追った。

と、人気のない廊下に辿りつくと、クリスティナがくるりと向きを変える。

そして、真っ直ぐ俺を見た。


「貴方は私が好きなのでしょう」


好きだ。物凄く。

特に、こうやって俺を真っ直ぐに見る時の眼差しが。

その通りだったので、俺は素直に頷いた。

心なしか、クリスティナはいつもより迫力がある。


「なら、私だけを見ていればいいのです」


クリスティナの両手が俺の顔を包んだ。

そのまま強引に引き寄せられる。

バランスを崩しかけた俺の唇に、柔らかいものが触れた。

クリスティナの唇だ。

ええと、これはその、クリスティナも俺が好きだという意味なのだろうか。

そんなの嬉しすぎる。

俺は自分の頬が赤くなるのを感じた。


「分かりましたか」

「……はい」


小さくそう答えることしか出来ない俺に、クリスティナが微笑む。

滅多に見られない極上の笑みだ。


「よろしい」