「セバスチァン、セバスチァンはいるか!」

「どうなされましたか、王子」


俺の呼ぶ声に、教育係りのセバスチァンが慌てて部屋へ飛び込んでくる。


「セバスチァン、役に立たなかったぞ、お前が異世界から取り寄せた恋愛の指南書」

「けぇたい小説のことですか?」

「けぇたい小説のことだ!」


魔法の発達した我が国では、様々なものを他国から召喚している。

けぇたい小説も、その中の一つだった。


「おかしいですね…私などは、いけめんな俺様が強引にか弱き乙女を口説くシーンで、胸がきゅーんとしたものですが…」


セバスチァンは胸がきゅーんのところで、拳を握り悶えてみせた。


「…セバスチァン、気持ちが悪い」


初老の男の悶える姿など見たくない。

セバスチァンは悪びれる風もなく一礼した。


「これは失礼しました」