『誰だって、そうじゃん?一緒に居た相手だもん。時間とか関係なしに、隣にあいつが居ない違和感は消えないよ。』


カウンター席の自分の隣を見てセンチメンタル的な事を言うと、あたしの3つ先のカウンター席に座ってる男と目が合った。

あっちは、前からあたしを見てた?


『かおりんも大人になったね〜。年齢偽って16ん時から飲みに来てた強者だもんな〜。』


ケラケラ笑いながらマスター樹は、その男の前に行った。


『ケンチャン、何飲む?』

『あぁ、テキーラロックで。』

"ケンチャン"っていうんだ──

って!
何考えてんだ!あたし!


慌てて正面を見た。


『はぁ〜、今日かおりんとケンチャンでお客さん最後かな〜。店閉めて、俺も飲んで良い?』


マスター樹は、あたしの返事も聞かずに表のネオンを消し、閉店の看板を掛けて戻ってきた。


『今日は失恋祝いで、かおりんの分奢ってあげるね!』


『おいおい、マスター樹!祝いって何だよ祝いって!』


『ま、いいじゃん!ほれっ!乾杯!』


マスター樹が自分の飲み物を持ってきて、あたしと"ケンチャン"の間に座った。