『で、昨日たまたまマスター樹ん所に寄ったら、久しぶりに香織ちゃんが来てた。一人でね。何かのチャンスかと思ったよ。彼氏と別れたって聞いて。』


『盗み聴きだったの?』


『聞き耳立ててました。』

笑いながらケンチャンがセブンスターのタバコを取り出した。


『吸って良い?』

『うん。』


ケンチャンはソフトケースからタバコを一本抜いて、銀のZippoで火をつけて煙を吐き出した。


『そんな見られると照れるって。』


ケンチャンの耳が真っ赤になってく。


『あはっ、ケンチャン耳赤いよ?むしろ、真っ赤!』


あたしが笑うとケンチャンも笑った。


『俺はその笑顔の香織ちゃんが好きなんだよ。』


あー、この人はきっと素直に思った事を伝える人なんだ。


そう思った。


『これ、デート?』


聞いてみた。

あ、何か女っぽいセリフだったかな…


『うん、デートで良い?』


ケンチャンが笑顔を向けてきた。


あ〜、デートって久しぶりだな。


『うん。』


ケンチャンとならこの新鮮な空気を保たせられるかも。



今日は楽しもう。
心からそう思えた。