『…………ね!かおりん!』

『えっ?』


やばい、聞いてなかったわ。


『何〜?聞いてなかったんか?だから〜、ケンチャン良い男なのに何で彼女居ないのかなって話!』


『その話はいいって言ってるじゃないっすか〜!』


『あはは。ケンさん、案外好きな人居たりして。』


試しに言ってみた。
試しにね。


『え…。』

『んっ?!ケンチャンそうなのか?!!』

"ケンチャン"が驚いた所をすかさず拾ったマスター樹。

『当たりですか?』


あたしが身を乗り出して聞くと、"ケンチャン"と目が合った。

─あ…、二重瞼だ。


『えっと…ケンチャンで良いよ。敬語もいらない。』


『あぁ…じゃぁ、ケンチャン。当たり?』


『まぁ…』


『何なに〜?惚れてる女がいんのか〜?!』


ほろ酔いのマスター樹はいつもより詰め寄る。