すると男の人はタメ息を吐いて、仕方ない、という表情をした。



「…片島雄大(カタシマユウダイ)」



そう低い声で呟くように言ったあと、また私に背を向け、行こうとした。



今度は私は何も言えなくて、無言でその場に立ち尽くしていた。



すると雄大さんは、また私のほうを向いた。



今度はさっきとは違い、また優しい瞳の雄大さんに戻っていた。



その瞳に安心感を覚え、胸が温かくなった。



雄大さんは、少しずつ私のほうへと近づいてきた。