私のこと好きって言ってくれたのに…?


沙紀さんは、電話の向こうでフッと微笑むと、



『あなた、本当に鈍いのね』



と、呆れた声で言った。



「…へ?」



『その子の名前はね…“横島癒杏”よ』



沙紀さんはゆっくりとそう言った…。



「ぇ…。わ、私…?」



『そうよ。雪兎はね、癒杏ちゃんのことが、小さい頃からずっとずーっと好きだったのよ』



「そんなことない…。だって雪兎、フランスにいる間ずっと沙紀さんのことが好きだったって…」



確かに…視聴覚室で、そう言ってた…。