自室に戻り、塾に行くための仕度をする。
 適当にいつものデニムを履き、黒いブラを着け、黒いTシャツを着た。

 鏡の前に立ち、髪を手櫛でなでつけ、一応ブラが透けないか確認。

 非常に女らしいことをしているな、と少しおかしくなった。

 こういうTシャツのような薄着になると、女性特有のボディラインが如実にわかる。

 頭の中に霞がかかったように、思考がモヤモヤし始めた。

『素敵なお嫁さんになってね』

 あの声が、頭の中で響いた。

 俺は別に、男になりたいわけではない。

 ただ、女になるのが嫌なだけなんだ。

「でも、お前は女だろう?」

 鏡の中の女に聞いてみた。
 返事は、ない。