オリザの話を要約すると、こうだ。

 演劇部は毎年、文化祭とコンクールの時期がかぶる。
 そのため、部員を2班に分けて稽古をする。

 ひとつは文化祭班。(主に1,2年生)
 もうひとつはコンクール班。(主に2,3年生)

 しかし、今年は部員が少なく、2班に分けることができない。
 したがって、文化祭とコンクール、両方の稽古を平行して行わなくてはいけない。

「それで1年生の2人がテンパっちゃってさ~
 文化祭の劇まで覚えられない!って…」
「その1年生2人がやる役を、私達が?」

 アサギは不安そうな表情をうかべる。

「文化祭とコンクールで、同じ劇をやるわけにはいかないのか?」

「コンクール用のは、1時間もあるんだよね~。それだと長すぎでしょ?」

「文化祭用のは、どれくらいなんだ?」

「30分!」

「それでも長いよ!セリフ覚えられねーよ、きっと」

「頼むよ~!ほかに頼れる人がいないんだよ~」

 オリザは両手を合わせて、俺達にお願い!と繰り返した。