絶対領域だ、なんて思いつつ、おれはそれを眺めていた。

 すると、「何見てんのよ!」という罵声が聞こえると同時に、その綺麗な左膝が曲がり、かと思うと伸びて、結果、彼女は爪先でおれを蹴っていた。

 蹴られた箇所は、いわゆる『弁慶の泣き所』。おれは足を椅子の上に乗せ、蹴られた箇所を両手でさする。

 何てやつだ……何て正確さで、何という力で蹴りやがる……。あ、ちなみに、絶対領域とは、ミニスカートとニーソックスの間に僅かに見える、生足の部分のことである。

「何すんだよ、このやろう」おれは抗議した。

「あんたがあたしの足をジロジロ見ているからでしょ。この変態!」彼女はおれの座っている椅子の隣の椅子に勢いよく左足を踏み出しながらおれを睨んだ。

「変態とか言うな!」おれは彼女に視線を返す。「だけど、足にみとれていたのは認める、素晴らしい絶対領域だ!」

「十分変態でしょうが」

「うおっ!」

 彼女が左足をあげて、再びおれに蹴りを見舞おうとしたので、おれは咄嗟に目を閉じて自身の身体をかばった。

 だが、待てど待てども悪魔のような蹴りは入らず。代わりに、机の上に荷物を置く音が聞こえた。おそるおそる目を開くと、それは彼女が肩から掛けていたバッグを机に置いた音らしかった。

「見たところ、あんた、友達いないのね、可哀想だから、あたしが隣に座ってあげるわ」