おれは一時間目の微分積分学の講義が行われる講義室を調べ、南キャンパスの入口の地図でその場所を調べた。

 そして、そこへと向かって赤い彗星の速度を再び上げていく。

 すると……なんということだろうか、道に迷うことも人に尋ねることもせずに、おれはその講義室に辿り着いてしまったのである。

 もしかしたら明日辺り、この京都は天変地異にでも襲われるのではなかろうか。本気で怖くなってきた。
昨日、今日と二日連続でおれが自力で目的地に着いてしまうなんて、常識的に考えるのならありえない……昨日はかなり道に迷ったけれども。

 ごめんなさい、みんな。おれがあっさりと目的地に辿り着いてしまったばっかりに、明日、空前絶後のカタストロフィーが発生するかもしれません……いわゆる前兆ってやつだ。

 ああ、神様、どうか我らをお護りください!

 そんな冗談はまあ心の片隅にでも置いておいて。

 講義室は扇方上の形をしている。黒板から離れるにつれて段々と床の高さが上がっていく、いかにも大学って感じのところだった。

 おれは黒板からかなり離れた三人掛けの席を確保し、その真ん中に腰を下ろした。

 そして、席取っていますよ、ここはおれの縄張りですよということを、後々この席を狙ってやってくるであろう名も知らぬ者たちへ伝えようと、両サイドに鞄やら取り出したノートやらを置いた。