確かに、こんなに明るい色の茶髪をしたやつが京大にいるとは想像しなかったとおれは思いながら、自分自身のことについては「そうかな?」呟き、今この時自分のしている格好を頭の中で再生してみた。

うん。

 言われてみれば、一般人が抱いているこの大学に通う生徒に対してのイメージとは、十分におれの格好もかけ離れているのかもしれないな。

 左側の前髪は長めに残し、右側は短くした、いわゆるアシメという髪型。右側側面に至ってはバリカンで刈り上げてある。さらに、長い方の前髪、つまり左側の前髪には予備校時代でもかなり色んな意味で噂されていたらしい金メッシュ。

 『らしい』というのは、実際はおれはあんまり知らないからだ。おれ自身は、入学式直前に電話を寄越したオーウェソたちから、金メッシュでかなりの有名人だよと言われて、ふうん、そうなんだとなっただけ。その程度の話である。

 あ、あと、先程から、茶髪の方が視線を送ってきているこの左手も、『らしくない』と思われる原因の一つか。

 いや、これはこの大学の生徒として、というよりも世間的な一般人として『らしくない』と思われているかもな。

 男のくせに、マニキュアを塗っているやつなんてそうはいまいとおれ自身は考えている。