しかし、なんだかんだ言いながら平穏なキャンパスライフを送る為には、アブナそうな人たちに関わってはいけない……これは鉄則なのだ。

 名声に目が眩んで(この場合名声と言うのが正しいのかどうかは知らないけれど)僅かばかりでも奇行に走ったが最後、二度と元の場所には帰ってはこられなくなってしまう。

 それは、中二病のおれが過去に紡ぎあげてきた痛々しい黒歴史の名場面集をご覧いただければすぐにご理解いただけるかと存じ上げる。

 だから、これに関しては仕方ない。

 信長さんよー、明智っちゃんに囲まれた時に「是非も無し!」って叫んだあんたの気持ち、今ならよーくわかるぜ。痛い程によくわかる。

 無念だよな……。喉から手が出る程に憧れたものが目の前にあるのに、どうにも届かないってのは歯痒いことこの上なしだ。

 そんなこんなでおれは黒い髪の女の子が独り腰掛ける五人ぐらい座れそうな長椅子の後ろを目立たないように通り過ぎ、場所としてはその右側の列を一つ前にいった長椅子に紛れ込んだ。

 その椅子には、二人、スーツを着た男子学生が座っていた。

 一人は、至って真面目そうなやつだ。殆ど黒に近い灰色のスーツをきっちりと着ていて、髪は短く、黒。縁の太い眼鏡を掛けている。