巧の声に立ち止まった涼は恐る恐る振り返る。

「涼…ちゃん?」

巧が言う。

「はい…‥。」

涼は戸惑いながらも返事をする。

巧と涼の中間地点にいた新は、涼に笑顔を向けると美術部の部室に引っ込んだ。

「あぁ…、新ちゃん…。」

涼の小声は新には届かず。

廊下に二人きりになってしまった涼は、近づいてくる巧におびえていた。

「そんなに警戒しないでよ。」

巧が笑顔で言う。

「あぁ、ごめんなさい。」

涼が言う。

「謝ることはないけど。」

「ごめんなさい、あっ!」

再び謝る涼に笑顔の巧。

視線を合わせられない涼の目の前まで、巧はやってきた。

「小田切 巧です。手紙、拾ってくれたよね?」

巧が言う。