「名前もわかったことだし、手紙、書けたのか?」

俊也は一人、三階の渡り廊下で黄昏る巧に声をかけた。

「書くには書いたよ。」

巧はポケットから取り出した手紙を見つめながら言う。

「じゃあ渡しに行けよ。」

俊也が言う。

「わかってるよ。」

巧が言う。

「…俺が代わりに行ってやろうか?」

そう言って俊也は巧から手紙を奪い取ろうとする。

「やめろよ!おまえ顔も知らないのにどうやって渡すんだよ。」

巧は俊也ともみ合いになりながら抵抗する。

「あっ!確かに。」

俊也は冷静になって手紙から手を離す。



その時、


手紙は2人の手をすり抜け、


風にのって地上へ舞い落ちる。



「何してくれてんだよ!!」

巧は渡り廊下の手すりから身を乗り出して下を見る。