しばらく2人はそれぞれの作業に集中し、無言の時が流れたが、ラブレターの執筆に行き詰まった巧が声を出した。

「…なぁ、」

俊也はその声に反応して筆を止める。

「何だ?アドバイスを求める気になったか!」

俊也は巧の方に振り返ると、何でも聞けとばかりに手招きした。

「名前…なんだけどさ、」

巧は呟くように言った。

「名前?…は、ちゃんと書けよ。誰からかわかんなきゃ意味ねぇだろ!なんだよ、そんなこと?」

俊也は質問内容にがっかりした様子。

「そうじゃなくて、相手の!相手の…」

「相手の?」

「名前…わかんないとき、どうすればいい?」

巧は思い切って俊也にたずねた。

「わかんねぇの!?名前。」

俊也は少し驚いて声を上げた。

「…しょうがねぇだろ、まだ二回しか見かけたこと無いんだから。」