実架子達のもとに戻った涼は、ため息をひとつ。

「どうかした?」

愛が声をかける。

「ううん。何でもない。」

涼はそう言うと、手元の本に視線を落とした。

「できた!!」

実架子が叫ぶ。

周りの人達が一斉に4人の方を向く。

「すみません…」

優一朗は周りの人達に頭を下げた。

涼と愛も頭を下げた。

当の実架子はニコニコ。

書き上げた手紙を3人に順番に向けると、自画自賛を始めた。

「いや〜、これは自信作。渡したら完璧!落ちます。」

実架子は大事そうにその手紙を封筒に入れる。

「渡せたら、だろ?」

優一朗が言う。

3人は優一朗の方を勢い良く見る。

「…えっ?だって、どこの誰だかも知らない人じゃ…」

実架子のテンションが一気に下がる。

「恋って怖いね…、冷静さ失うんだから…」

涼がぽつり。

それから、優一朗の指摘通り、あの駅で待つ実架子は、一目惚れの彼に出会うことはなかった。