「あっ…」

涼は一人、呟くと、困った表情を浮かべた。
読みたい本が届かない棚にあったからだ。

背伸びをして、手を伸ばして、周りを確認してから、ジャンプしてみたりもした。

「無理か…」

そんなに身長の低いわけでもない涼だったが、近くに踏み台になりそうな物も見つからず、諦めて優一朗に頼むことにした。

「どれですか?」

そんな時、涼の背後で声がした。

「えっ…あの、あれです。」

涼は戸惑いながら読みたい本を指差した。

「これ?」

「隣の…」

そう言った涼に、親切な背の高い男の人は本を、涼に手渡した。

「ありがとうございます。」

「いいえ。」

男の人は笑顔で去っていった。

涼は恥ずかしそうにしている。

恋をしたわけではない。

周りを確認したにも関わらず、ジャンプしてた自分を見られていたことが恥ずかしかったのだ。