「…少しは、落ち着いたか?」
「…うん」
穏やかな口調の朱馬に、鼻をすすって答える。
あれから何も言わずに泣き続けたあたしを、ただずっと、朱馬は抱き締めてくれていた。
時折頭を撫でる、大きな手。
安心出来る温もりに、自然と涙は溢れて、止まらなかった。
「ごめん…朱馬」
「いーって。つかお前、謝りすぎ」
「…ごめ、あ!…ありがとう」
「それで良し」
そう言って、ニコッと微笑む朱馬。
あぁ、ずっと届かなかった存在が、こんなにも直ぐ近くにいる───。
「っ!!七江?」
そっと、朱馬の頬に触れた。
顔を上げて目を合わせる。
ほんのり、朱馬の頬が色付いて、触れている指先に熱が伝わる。
「朱馬───」
「七江……?」
そして、顔をゆっくり近づけ───。
「ちょっと朱馬っ!!!迷子ってどういう事───」
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