ため息をついて、朱馬は近くのベンチに座った。

「…俺ン家電話して、母さんに迎えに来てもらうわ」

「…ごめん」

「いーって。気にすんな。…てか、お前ン家じゃねぇ方がいーだろ」

カチカチと携帯をいじる朱馬をじっと見つめ、改めてその整った顔立ちに見惚れる。

無意識に紡がれる心地良い声に、胸がざわつく。

「…オーイ。七江っ?」

「え?あ…えっと?」

「何ボーっとしてんだよ。つぅか急に黙んな」

「ごめん…」

あれ。あたし、何かさっきからこいつに謝ってばっかり?

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