「利香…。」


アタシに気づいた千草の手から、ドラマのワンシーンみたいに、今さっき受け取ったばかりのたこ焼きのパックが滑り落ちる。


たこ焼き屋の頑固そうな店主が、それを見て一瞬顔をしかめたけど、すぐに見ないふりをした。


千草の隣りにいる成宮君は、露骨にマズイって顔をしたまま、立ちすくんでいる。


アタシはしばらく千草と見つめ合ったまま動けなかった。


まさに時間が止まったような感じ。