「あのババァ!家まで来たのね?今度来たら塩まいてやりなさい!」


緒方さんの事を知ったママはカンカンに怒っていた。


「ねぇ、ピノコ、手放したりしないよね?」


不安でたまらなくなったアタシはとうとう泣いてしまった。


ずっと我慢していた涙は簡単には止まらず、声を殺しながら泣いた。


「バカねぇ。渡すはずがないじゃない。」


ママはティッシュでアタシの涙を拭う。


拭っても拭っても涙が溢れる。


そんなアタシをママは抱き寄せてくれた。


お化粧と香水とタバコの匂いがする。


懐かしいママの香りを久しぶりに胸いっぱいに嗅いだら、不思議と気分が落ち着いてくる。


「泣かないの。ママはね、利香もエマも寿一もピノコも誰も手放したりしないわ。だって、大事な大事なママの宝物だもの。」


「ママ…。うぁーん!」


何年ぶりかにママに甘えた。
ママはアタシが泣き止むまで、ずっと背中をさすってくれた。