「そうは言うけど、みんな携帯持ってるのに私だけ持っていないのは嫌だった。それに、私が携帯を持つようになってから野々村先輩も喜んでくれたの。これで寂しくないね?って。」


「それでエマはいいの?野々村先輩の事好きなのに、もう1人の彼氏と一緒にいるの苦痛じゃないの?」


「時々嫌になる…。けど、タケはお金持ってるし、流行りの服や化粧品もたくさん買ってくれる。今、携帯もタケからのプレゼントも無くなるのは痛いかも…。」


「うちにお金が無いせいだよね?」


もしもうちが当たり前にお小遣いと携帯を買い与える余裕があれば、エマは二股なんかしなかったんじゃないかな?


新しい洋服や、化粧品欲しさに、若干中学二年生の女の子が心を売るなんて切なすぎる。


「そうじゃないよ!ただ私が我慢できないだけ。それにウリとかするよりよっぽど気楽だしね!」

う、ウリ?!


妹の口からウリなんて言葉が出た事にショックを受ける。


「エマ!!」


「ハハハ!冗談だよ!そんな事しないから安心してよ!さっ、続き作ろう?」


エマは包丁で切った指を庇いながら材料を炒めたり混ぜたりした。


その横顔はとても真剣で、本当に本命の彼氏である野々村先輩の事が大好きなんだと伝わってきた。