暫く小突き合いをしていると、皋の睫毛が震えた。


あたしはそれを見逃さず、明奈の肘を巧みに避けると、皋のベッドの脇にしゃがみこんだ。


「皋!?」


「……ゆ………り…?」


皋の目がうっすらと開き、あたしの声を聞いたのか、名前を呼んでくれた。

あたしは思わず、点滴の繋がっている手を、針に気を遣いながら握り締め、必死な表情で語り掛けていた。


「そうだよ、優里だよ。わかる?」


「うん………わかる…今日も、来てくれてたんだね…」


口から発せられる言葉は弱々しかったけど、こうして意識が戻って良かった。


「優里。取り敢えず看護師さん呼ぶね」


明奈はナースコールに手を伸ばし、丸いボタンを押した。


あたしはそう言えば明奈が居たことを思い出し、急に恥ずかしくなってしまった。