あたしの真っすぐな視線を痛いほど受けた彼女は、目を逸らすことも出来なければ、口を開くことも出来ないようだ。


ただ、困ったような表情で見つめ返してくるだけ。


「あたしには、彼は特別な存在なんです。腐った世の中を冷めた目で見てたあたしに……閉ざされてたあたしの心に……光を灯してくれたから」


あたしは勝手にそう言っていた。

本当のことだ。


彼に会っていなければ、今のあたしは間違いなく存在しない。


「いつもあたしが一方的に喋ってばっかで……皋は、優しく聞いてくれてるから……だから、今度は……」



あたしは拳を固く握り締めた。








「あたしが皋を知りたいんです。知らなきゃ、いけないんです」





あたしに、迷いはなかった。


あるとすれば、




皋を思う、心だけ。