「あの、もう面会時間が過ぎています。患者様や付き添いの方以外の方は、お引き取り下さい」


何時間経ったのか判らないけど、看護士があたしに声を掛けてきた。

あたしはぼんやりとした頭で、その看護士を見上げた。


心配そうな表情をした彼女に、今のあたしはどう映っているのだろうか。

酷い顔をしてる?


「皋は………?」

「……はい?」



「皋は、無事なんですか?」


あたしは看護士の言葉をまるで無視していた。

というか、彼女の言葉は最早あたしの中では他人事だった。


「皋は、無事なんですか?」


何も言わない看護士に、あたしは同じように再び尋ねた。

まだ年若い看護士は、戸惑っているようだ。


あたしの顔を見ながら眉を八の字にして、困った顔をしている。


「今はだいぶ容態は落ち着いてます。意識は戻っていませんが…」

「……そう……ですか…」



そのあとは、もう記憶が無い。


どうやって帰ったのかも、覚えていなかった。