それは、僅か数分前の出来事。
学校を終えたあたしが、ゼリーを差し入れに病室を訪れた時のこと。
皋はいつもと変わらない綺麗な笑顔であたしを迎え、あたしもゼリー片手に笑顔を見せる。
彼には、見えていないのだけれど。
「今日はゼリー持ってきたんだ!食べれるでしょ?」
「うん!いつもありがと!」
「良いのよ。あたしも話聞いてもらって、色々助かってるんだから。だからそのお礼」
あたしは何時もそう言いながら、ベッドの近くの小さな台にゼリーを載せ始める。
「良い匂い!頂きます〜♪」
手を合わせ、あたしが差し出したゼリーを口に運ぼうとした、その瞬間だった。
皋は激しく咳き込んで、口から紅い液体を吐き出した。