たん!


窓が乾いた音をたて、次の瞬間、サァァアア、と雨が降り注いだのだ。


外は知らないうちに曇っていて、白い空からは激しく雨粒が落ちてきて、周りのビルや人、車を叩いている。


「あ、降ってきちゃった…」


あたしは思わず呟いていた。傘を持ってくるのを忘れていた。


と、言うか、まさか雨が降るだなんて思ってなかった。


さっきまで晴天だったのだから、致し方ない。


「傘、ないの?」


「うん」


皋の問いに、あたしはただ頷いた。


「そっか……そしたら、そこの棚の、一番奥。折り畳み傘、あるから使って」


「良いの?」


「うん。俺にはもう、必要ないから」


皋は淋しそうに答えた。

それは、暗に自分がもう自力で外には出られない体になっていると言うことだろうか。


「使って、ね?」


「うん」


あたしは取り敢えず、言われた通り棚を物色した。

案の定、そこに傘はあって。

ひどくなる前に、帰ることにした。





見上げる空は、白い。